SSブログ

予告殺人 アガサ・クリスティー [本]


予告殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

予告殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/11
  • メディア: 文庫



昔読んだ本だが、最近テレビでドラマ化されたので、記事にしておく。

昔、アガサ・クリスティーのミス・マープル物をいくつか友人に勧めたら、「面白くなかった」という感想で、大変に凹んだことがあった。「予告殺人」は、その一つ。

人にはそれぞれ好みがあるから、こういう「何の変哲もない田舎が舞台」で、「老婆が探偵役」の推理小説は退屈だとする人がいてもおかしくはない。

でも、「予告殺人」は、私の大のお気に入り。動機といい、トリックといい、時代の雰囲気といい、名作だと思っている。「鏡は横にひび割れて」「パディントン発4時50分」「ポケットにライ麦を」などとともに、イングランドの田舎の牧歌的な世界の良さを、わかってもらいたいと思うのだ。

「予告殺人」の背景は、第二次世界大戦後の混乱した時代。
海外に住む親類が、今はどうしているかわからない。長く離れていた甥や姪が、同居させてくれと頼ってくるが、実はそれが本物かどうかは確信が持てない。銃の使い方を、案外みんなが知っている。戦死、病死など、「死」が今よりも身近にあった、そういう時代である。

「殺人お知らせいたします。」という新聞広告を読んだ村の人が、何かのゲームだと思い、レティシア・ブラックロックの家に続々と集まってくる。そして、停電で真っ暗になり、ドアが開き、強盗らしき男がホールドアップを叫ぶ。しかし、銃声とともに、本当に死んでいたのはその強盗。レティシアの耳は銃弾が掠めた傷で血まみれ。

レティシアは、あと数週間すれば、大金持ちの遺産を受け取るという身分。彼女が死ねば、その大金持ちの遠縁に財産が行く。狙いはレティシアの殺害か?

というわけで、お約束の、村中がみんな容疑者、みんな怪しいという事態に。

しかし、本当に狙われたのは、その強盗の男の方だった。彼はそうとは気がつかず、犯人の重大な秘密を知る存在だったのだ…。

***

先日のドラマ化では、舞台は現代の日本。
レティ、ロティ、という「呼び名」が事件の重要な鍵となるのだが、「レイリー」「ロウリー」という、どこの国の話、という名前に変えられていて違和感。さらに、登場人物みんながヘンテコな当て字のキラキラネームにされていて、それもゲンナリ。日本の名前でも、十分に成立したと思えるのに。

それに、現代の日本では、遠縁で馴染みのない若者をいきなり同居させるだの、戸籍情報のすり替えだの、あまり現実味がない。つまり、時代背景を日本の現代とすると、物語そのものの成立が怪しいのだ。戦後の混乱期に設定すればよかったのにと思う。

そして、せっかく「マープル物」なのだから、探偵は中高年の女性にしてもらいたかったなあ。

「大地真央は、いくつになっても綺麗ね」というのが、最終的な私の感想。
せっかくのドラマ化が、ちょっと残念な結果に終わった。


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。