予告殺人 アガサ・クリスティー [本]
昔読んだ本だが、最近テレビでドラマ化されたので、記事にしておく。
昔、アガサ・クリスティーのミス・マープル物をいくつか友人に勧めたら、「面白くなかった」という感想で、大変に凹んだことがあった。「予告殺人」は、その一つ。
人にはそれぞれ好みがあるから、こういう「何の変哲もない田舎が舞台」で、「老婆が探偵役」の推理小説は退屈だとする人がいてもおかしくはない。
でも、「予告殺人」は、私の大のお気に入り。動機といい、トリックといい、時代の雰囲気といい、名作だと思っている。「鏡は横にひび割れて」「パディントン発4時50分」「ポケットにライ麦を」などとともに、イングランドの田舎の牧歌的な世界の良さを、わかってもらいたいと思うのだ。
「予告殺人」の背景は、第二次世界大戦後の混乱した時代。
海外に住む親類が、今はどうしているかわからない。長く離れていた甥や姪が、同居させてくれと頼ってくるが、実はそれが本物かどうかは確信が持てない。銃の使い方を、案外みんなが知っている。戦死、病死など、「死」が今よりも身近にあった、そういう時代である。
「殺人お知らせいたします。」という新聞広告を読んだ村の人が、何かのゲームだと思い、レティシア・ブラックロックの家に続々と集まってくる。そして、停電で真っ暗になり、ドアが開き、強盗らしき男がホールドアップを叫ぶ。しかし、銃声とともに、本当に死んでいたのはその強盗。レティシアの耳は銃弾が掠めた傷で血まみれ。
レティシアは、あと数週間すれば、大金持ちの遺産を受け取るという身分。彼女が死ねば、その大金持ちの遠縁に財産が行く。狙いはレティシアの殺害か?
というわけで、お約束の、村中がみんな容疑者、みんな怪しいという事態に。
しかし、本当に狙われたのは、その強盗の男の方だった。彼はそうとは気がつかず、犯人の重大な秘密を知る存在だったのだ…。
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先日のドラマ化では、舞台は現代の日本。
レティ、ロティ、という「呼び名」が事件の重要な鍵となるのだが、「レイリー」「ロウリー」という、どこの国の話、という名前に変えられていて違和感。さらに、登場人物みんながヘンテコな当て字のキラキラネームにされていて、それもゲンナリ。日本の名前でも、十分に成立したと思えるのに。
それに、現代の日本では、遠縁で馴染みのない若者をいきなり同居させるだの、戸籍情報のすり替えだの、あまり現実味がない。つまり、時代背景を日本の現代とすると、物語そのものの成立が怪しいのだ。戦後の混乱期に設定すればよかったのにと思う。
そして、せっかく「マープル物」なのだから、探偵は中高年の女性にしてもらいたかったなあ。
「大地真央は、いくつになっても綺麗ね」というのが、最終的な私の感想。
せっかくのドラマ化が、ちょっと残念な結果に終わった。
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