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映画「オリエント急行殺人事件」 [映画]


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以前、フジテレビが製作した「オリエント急行殺人事件」。録画してあったものを見た。三谷幸喜の脚本で、野村萬斎のエルキュール・ポワロ(名称は勝呂武尊)。

舞台は日本に移しているが、時代を昭和初期に設定したおかげで、公爵夫人、伯爵、退役大佐、執事、料理人、運転手、など、アガサ・クリスティ原作とほぼ同様の役柄設定が可能になっている。

なかなかよく出来ていて面白いのだけれど、カメラアングルとか、役柄の性格描写などは、やはり1973年英国のEMI製作の映画「オリエント急行殺人事件」(上の画像の作品)の影響を受けていると思わざるを得ない。

あれは、名作だった、と、私は思っている。アート系映画の好きな友人に言わせれば、有名なスターを並べた映画なんか、ふん、という感じだったけれど、私はああいう派手なものも好きだ。

1973年のは、監督はシドニー・ルメット。「12人の怒れる男」を作った監督だから、この映画にうってつけ。名探偵ポワロは、英国俳優のアルバート・フィニー。

有名な話だからネタバレしてもいいと思うけど、容疑者が全員犯人、という、ミステリーの常識を破るこの作品。ルメットは、こういう様々な階級、色々な性格の描写が上手いなあと、改めて思う。

登場人物は華やかだ。イングリッド・バーグマン、ローレン・バコール、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドグレイブ、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ジョン・ギールグッド。

まあ、そういう名作だから、三谷幸喜もきっと大好きだったのだろうね。

ポワロの野村萬斎のオーバーな演技も、アルバート・フィニーを踏襲しているように見える。というのも、英国ドラマのポワロは、もっと地味でケレン味のない性格。実際小説のポワロも、フィニーや萬斎のほどアクが強くない。

ハパード夫人役の富司純子の演技も同様。衣装も、1973年作品のローレン・バコールの感じにそっくり。

「オリエント急行殺人事件」の映像化は何本もあるけれど、こうして新旧作品を比べてみるのは、大変楽しい。西洋ではシェイクスピアやオペラ、日本では能、歌舞伎など、伝統芸能は同じストーリーを演出や役者を替えて100年以上上演を続けているわけだが、その時代その時代でファンを獲得して人気が衰えない。クリスティ作品も、そういう「十八番」のようになって、愛され続けるのではないか。

次にポワロを演じるのは誰か。これこそベストポワロ、と言われるようなポワロがこの先出てくるのか。大変に楽しみである。

***

たった一つ、三谷作品で残念なのは、時代設定が昭和初期なのに、和服を着ている人物がメインキャストでは一人も登場しないことだ。住まいも、豪華な洋館。椅子の生活。万事西洋式の豪華な寝台特急。

床の間つきの和室や、よく手入れされた和風庭園などは、皆無。食事もナイフとフォーク。

戦前の日本の上流階級は、こんなに洋式一辺倒だったのだろうか?

確かに、現在の庭園美術館(旧朝香宮邸)などを見ると、豪華な洋風の生活こそ上流階級の証だったのかとも思えるけれど。

まあ、あのような作品に、時代のリアリティは求めないことにしよう。スターのずらりと並んだ華やかな映画。ファンタジーとして楽しめばいいのかな。





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middrinn

何回かリメイクされた映画「細雪」の1983年版を観ましたが、戦前から戦中の
大阪の旧家が舞台でしたけど、着物のシーンが多かったような記憶が(@_@;)
by middrinn (2020-04-19 08:13) 

YURI

middrinnさん

私も細雪1983年版、見ました〜!お気に入りの映画です。
和服が優雅でしたね。確か、戦前の着物は身幅や袖丈が広く仕立ててあったとかで、衣装もそのように仕立てられたものだったと思います。羽織の丈が今よりずいぶん長かったり。
「オリエント急行」の三谷版。あのような時代のリアリティは、多分要求してはイケナイ作品なのでしょうね。
by YURI (2020-04-21 19:35) 

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