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「三島由紀夫『豊饒の海』のススメ」展 鎌倉文学館 [博物館]

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鎌倉文学館で、「三島由紀夫『豊饒の海』のススメ」という企画展を見た。

三島由紀夫『豊饒の海』は、三島の自決直前に完成した、いわば「遺作」で、そして三島の代表作とも言える大作である。

「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の四部から成っていて、それぞれの作品の主人公は「春の雪」の主人公の輪廻転生した姿という設定。彼らは、自らの宿命に従い命を燃やし尽くす様に生き、必ず20歳で死んで行く・・・

美しく、華麗で、しかし後半は苦々しく崩れてゆき、そして最後は「無」という、本当に壮大な物語なのだが、うまく説明するのは手に余るから、もしまだだったらぜひ読んでみてほしい。(「春の雪」は、何年か前に妻夫木聡と竹内結子で映画化されていたから、有名なのかもしれない。)

大好きで、いつも手元に置いて時々拾い読みしている。こんなに再読に耐える物語は、そうはない。

しかし、文字多めの展示をじっくり見学していると結構疲れるから、要注意。

鎌倉文学館は、旧前田侯爵家の別邸だった建物だという。

こんな緑の中、トンネルを通って文学館へ。

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建物。

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窓からは海が見える。
お庭は洋風で、バラ園があった。

「春の雪」というバラがあったから、写真を撮った。小さくて、儚げなバラ。

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***

せっかく鎌倉に来たのだから、扇ヶ谷の「浄光明寺」に立ち寄ってみた。このお寺には、藤原定家の孫で、冷泉家の始祖、冷泉為相のお墓がある。

こんな石段を登っていく。

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冷泉為相墓所。

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冷泉為相の母は、「十六夜日記」の著者、阿仏尼(あぶつに)。

彼女は、60歳にして、土地の権利の訴訟のために京都から鎌倉まで旅をした。約700年も前のことである。「とはずがたり」の後深草院二条や、この阿仏尼など、旅する女、ましてや、中高年で旅する女には、いつも心惹かれてしまう。




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コメント 2

middrinn

『豊饒の海』は、例によって未読なんですが、三島由紀夫の次作(?)を
読んでみたかったです(^_^;) 澁澤龍彦「絶対を垣間見んとして……」同
『三島由紀夫おぼえがき』(中公文庫,1986)所収に〈・・・少なくとも
三、四年前までは、三島氏はライフ・ワークとみずから称した『豊饒の海』
の後に、さらに書きつぐべき将来の仕事のテーマを持っていたと考えられる
とだ。先日、高橋睦郎氏に会ったとき、彼に指摘されて、私もまた、自分の
記憶の底から三島氏の言葉がはっきりと浮びあがってくるのをおぼえたが、
「僕はいずれ定家卿を書きたいんだよ。藤原定家だけは書きたいな」と氏は
一時期、しきりに語っていたことがあったのである。もし氏が死に急ぐこと
をしばらくやめ、『豊饒の海』完結のあとに、藤原定家を主人公とする新たな
小説の高僧を立てていたなら……などと空想してみるのも、いまは詮なきこと
ではある。・・・〉とあって、最近になって非常に気になるところです^_^;
by middrinn (2019-06-15 08:50) 

YURI

middrinnさん、すごいお話、ありがとうございます。初耳でした。というか、私は三島由紀夫その人についてはたいした知識もないんです。今回の展示によれば、三島は随分と「きちんと」した人で、「豊饒の海」を書き上げ、ちゃんと出版社に渡す手はずまで整えてから最後の決起に出かけたとあったので、次回作の構想があったとは思いもよりませんでした。しかも、藤原定家とは。三島の書いた定家、読んでみたかった!せめて澁澤龍彦の本、読んでみます。中公文庫には今もある様ですね。
情報ありがとうございます^^
by YURI (2019-06-15 20:58) 

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