ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ A.J.フィン [本]
「こんな女性が探偵役のミステリは読んだことがない」という山崎まどか氏のコメントが帯にあって、早川書房今年イチオシのミステリであるらしい。
こんな女性、というのがどういう女性かというと、
・ニューヨークの高級住宅街の4階建の家に一人暮らし
・精神分析医で肩書きは「ドクター」だが、今は休業中
・広場恐怖症で、家から一歩も出られない。
・夫と娘とは別居中
・精神系の薬を服用中、主治医も精神科医
・メルローというワインをいつも飲んでいる
・「ガス燈」「めまい」など古い映画が大好きで、いつも見ている
・デスクトップのパソコンでチャット、iPhoneのユーザーである
・年齢は38、9歳。(物語中誕生日が来る)
確かに、どんなに知的な人物でも家から一歩も出られないとなると、リンカーン・ライムのように手足となってくれるパートナーでもいない限り、事件解決は無理だろうと思う。
それなのに、彼女は、向いの家で起こる殺人事件を、こちら側の窓から目撃してしまうのだ。
しかも、精神系の薬を常用し、さらにアルコール過剰摂取気味であることから、彼女の告発は誰にも信じてもらえない。警察も、一応の聴取のあと「幻覚」と判断して帰ってしまうのだ。
ここで、知的な人物だったはずの初期の彼女のイメージはくずれ、精神不安定で孤独な中年女という実像があらわになってくる。
しかし、事件はやはり現実に起こっていたのだ・・・
そして、彼女自身にも危険が迫り、対決の時がやってくる。
というわけで、前半の彼女の日常描写はやや退屈だが、事件が起こってからの後半はほとんど「一気読み」。大変に面白かった。
この作品は映画化も決定しているらしい。
彼女の高級住宅でのライフスタイルの映像化は楽しみだし、古い白黒映画も効果的に使われるにちがいない。今から大変に楽しみである。
タグ:海外ミステリ
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